前回ドイツ大会での反省を踏まえ、南アフリカ大会ではさらなる改良がボールに施された。その名もブブゼラジャブラニと言い、非常にうるさかった技術の粋を集めたはずが、皮肉にも扱いにくい特殊なボールとなってしまった。
2010年 ワールドカップ南アフリカ大会では
–<Wikipediaより一部引用>–
天候に左右されずにキックの安定性を得るため、表面皮革パネル数を2006年大会使用球「チームガイスト」の14枚から6枚減らして8枚としている。
またこの皮革には特殊なデザインが施され、これを組み合わせることにより「より完全な球体」へと近づけることができたという。
さらに表面上には濡れた際の滑りやすさを抑えるための凹凸が施されている。
これにより「無回転シュート」のボール変化は通常より大きくなるとされ、さらにワールドカップが行なわれる南アフリカでは試合会場の多くが標高1000m以上の高地にあることから、気圧によって特にロングキックやミドルシュートにおける伸び・変化はさらに大きくなると指摘されている。
— — 区切り線 — —
このシリーズ①大会で使用されるボールの持つ特性(後半)で話した通り、太字の部分に間違いがあるのだ。
まず前提として、物体が大きい場合カルマン渦自体も大きくなり脱離する空間も大きくなるため、マグナス力よりもカルマン渦の影響が著しく大きい。
それは野球でもサッカーでも、マグナス力が原因であれば一定して変化するはずなので、急にボールが変化したように感じることからもカルマン渦が原因といえる。(実際の感覚はあくまでも感覚であって、あてにはならないが…)
次に、濡れた際では車のタイヤ同様、水が凹凸に入るために「滑りやすさ」は抑えられる、これは正しい。
しかし、前回の④ボール表面の加工でも話した通り、凹凸を付けるとカルマン渦は小さく、成長も遅くなり、「カルマン渦≫マグナス力」と言う構図が崩れるのだ。(凹凸をつけることでカルマン渦の影響が著しく落ち、マグナス力の影響だけが残ったということ。)
そのためカルマン渦による変化量は極端に減り、マグナス力での変化に偏ることになる。
ボールに働くマグナス力も表面の凹凸状の加工により本来よりも少なくなることは間違いない。
結果としてカーブや落とす球などの一般的な変化もしにくいボールが完成されたのだった。
<シリーズ冒頭で出た解説者>
どうやらTVでの解説者などはこのパワーバランスを知らなかったらしく、間違った説明をしていたのだ。
一般的(?)に流体力学ではマグナス力とカルマン渦は常識的な話なので、なぜサッカーボールと流体の間違った解説をしたのかが理解できない。
流体力学が専門でないビリーでも「ボール表面に凹凸を施した」と言う時点で「こりゃ変化しねーな」と思うレベルだった。
カルマン渦とマグナス力の抵抗が減った球は、ただ速度が落ちにくい「速いだけ」の玉となってしまったのだった。
カルマン渦を小さくすると流体抵抗は下がる
流体抵抗についてはシリーズ③辺りでも話題にしたが、渦の抵抗を下げることではゴルフボールが有名である。
誰もが一度は見たことがあると思うが、ゴルフボールの表面にはわかりやすいほどの加工がされている。
その昔ゴルフボールはゴムや樹脂の塊で、くぼみのないツルツル状態だった。
ところが19世紀半ば、ある大学教授がキズついたボールの方が遠くに飛ぶことに気付き、以来わざと一直線の傷を縦と横に、網目のように傷を付けるようになったのだとか。
ゴルフボールは小さい(更に重い)ためにカルマン渦よりもマグナス力の影響が強い為にブレたりなどしない。
ゴルフボールを打った後に大きく変化するのは純粋にマグナス力の影響であり、あんたの打ち方のせいである…
それでは一般的なゴルフボールと表面がツルツルのピンポン球の空気抵抗の動画を見てみよう。
後ろにできているのがカルマン渦だが、ゴルフボールの方が渦が小さい(少ない)ことが分かる。
この動画は風洞(ふうどう)という実験道具の中で行っているので、物体の重さ(質量)は無関係だ。
物体の速度が同じ場合、空気により物体に与えられる力は同じなため、物体の重さにより変化量が変わる。(ピンポン球の方が変化しやすい。)
それでは表面の凹凸の形や大きさ、深さによっても変わる抵抗の動画を見てみよう。
どこかの宣伝動画だったようだが、これでカルマン渦の発生を減らし、ボール表面の凹凸が空気抵抗を減らすことがわかっただろう。
ちなみにゴルフボールは表面がつるつるだと、飛距離が3分の2程度になってしまうのだとか。
これはマグナス力の抵抗に加え、カルマン渦の流体抵抗が増した結果と言える。
サッカーボールは比較的大きく、南アフリカ大会の公式球ブブゼラジャブラニは表面に特殊加工がされていた。
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変化しない為の加工がこれだけ施されたサッカーボールなのだが、実はまだ変化しなくなる原因はあったのだった。
(続く)
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