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サッカー日本代表がW杯ベスト8の壁を打ち破る為の戦術(タクティクス)をビギナー(初心者)でも分かるように分析します!土曜日の19時更新目標!

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【12月10日】ROUND8 ブラジル対クロアチア

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ブラジルは世界ランキング1位。
ワールドカップ最多の5回優勝国。
監督のチッチ氏は組織的に動かない選手を排除して選手を一新した。
現在7年目で、ラインコントロールと激しいゾーンプレスを得意とし、ネイマールを中心とした攻撃が特徴的。

クロアチアは世界ランキング12位。
今大会ベスト16で日本を倒し、前回準優勝の国。
レアルマドリードのモドリッチ(37)を中心に安定感は抜群だが、決定力に欠ける。
グループリーグでは体調不良などでベストメンバーではなかったが、この試合から二人が戻ってきた。
メンバーの交代がどの程度影響するのだろうか。

ビリーはこの試合前までクロアチアを特徴がないチームだと分析していたのだが…

ブラジルの圧倒的攻勢が予想されるが…

 開始ブラジルは攻撃時に2~3バックとウィングバック、守備時は4バックを基本としているように見えた。
クロアチアは4バックのシステムで、これまでと同じフォーメーション。

ブラジルが一方的にボールを持つことが予想されたが、クロアチアも一方的に押し込まれるわけではなくそれなりに善戦する。
ただブラジルは中央とサイドを全部使いこなすが、クロアチアはほぼサイド攻撃のみになっていることからも実力の差が見て分かる。

前半 予想とは異なる互角の戦い

 ブラジルは変幻自在のディフェンスラインにより中盤を数的優位を作りコントロールする。
対するクロアチアは、鉄壁とも言える守備からモドリッチを中心としたカウンターが持ち味…のはずだったが、ブラジルも鉄壁であったがためにお互いの良さを消し合う試合となる。

ブラジルの戦術 ディフェンスラインが攻防一体

【ディフェンス】

チッチ監督が得意とする改良型カテナチオ(ラインコントロールとゾーンプレス)。
もちろん相手の力量によってプレスの掛け方は変わるが、システマチックになることで当たりの強さなど個人の能力が発揮されるようになった。

【オフェンス】戦術-ネイマール?

ブラジルの攻撃は戦術ネイマールと言いたいが、実はそうでもない。
恐らくは名称チッチ監督により徹底的に戦術的な行動が求められ、システマチックになっている。
まず3バックが2バックに変わり、中盤の人数が増える。
中盤に居たMFが一列上がり、前線の人数は更に増えるのだ。

クロアチアの戦術 ゾーンプレス破り

【ディフェンス】

サイドの選手がマンツーマンディフェンスになることで5バックに見えることもあったが、基本的に4バックであった。
安定したDF陣に穴はないのだが、DFをしっかりとするために前線への押し上げが遅く、数的優利を築くブラジルの戦術を破るまでには至らない。

【オフェンス】-戦術モドリッチ

ブラジルの改良型カテナチオのゾーンプレスは「守備が一定の距離を維持しなければ成り立たない」のだが、クロアチアはその距離以上を保ち、ボールをキープし展開した。
選手全員が精度の高いパスとドリブルを織り交ぜた高度な技術を持ち合わせていたことで実現したゾーンプレス破りの戦術だった。

アルゼンチンのメッシ同様に、クロアチアではモドリッチがボールへ多く関わるような戦術になっていた。
広い距離のポゼッションからモドリッチを中心にカウンターの速攻を基本としていた。
アルゼンチンは攻撃的だったのに対し、クロアチアは守備的なチームだったと表現するとイメージしやすいかもしれない。

安定したラインコントロールではあったのだが、ブラジルのラインの裏へ飛び出せる選手が一人でもいればモドリッチがもっと活かせたかもしれない。

戦術モドリッチが機能しない理由とは

前半はカウンターをしない戦術だったのかもしれないが、裏へ飛び出す選手が居ない。
右画像では、クロアチアのFWが黄色いラインの裏へ走り出し、青いラインでパスを出すべきところだが、何故か中央のFWがラインの後ろへ走り出さない。
実際にパスを出さなくても、走り込むふりをするだけで黄色いラインが下がる効果を持つため、中央のスペースが空くことになる。

ところが写真二枚目のように、中央の選手はほぼ移動せず、逆サイドの選手も裏をつくわけでも無い。
パスミスにも見えるが、クロアチアはサイドチェンジを行うだけで攻撃が単調になるのであった。

カウンター攻撃はボールをロストしやすい(相手に渡しやすい)ために行わなかった可能性もあるが、点を取るためにはこういったリスクも背負うべきところはあるのではなかろうか…

こういった消極的とも見える攻撃のせいでブラジルのラインは下がらず、ブラジルは中盤での数的優位を続けることが出来た。
その結果モドリッチが下がってボールを前線へ運ぶ役割になることしか出来なかった。

そのため本来攻撃に変化を生み出したり、ラストパスを出す司令塔のモドリッチが役割を果たせなかったのだ。

後半

ブラジルはあまりイメージが変わらないが、クロアチアは前半とは変わり走り出す。
前半消極的だったのは、やはり気候の面や日本戦で120分を戦った体力面を考えてのことだったのだろうか。
過密日程での疲労も蓄積されているのかもしれない。

【ブラジル】

 後半18分すでにボールを持ってない選手は立ち止まり、足元でボールを待ち続けるシーンが増えてきた。
クロアチアのモドリッチのようにネイマールをボール運びやゲームメイクに使うのではなく、あくまで組織の一人とする。
ネイマールの負担は軽くなるが、ブラジル全体の攻撃は単調な印象を受ける。

【クロアチア】

 モドリッチがDFと並んでパスを出さなければ攻撃が始まらないのはいかがなものか。
これでは戦術モドリッチと言うよりも、他の選手が何も出来ないのかと言われても仕方がない。
ボールタッチもパスも上手い世界的な選手たちが、モドリッチ一人に頼らざるを得ないとはどういう状況なのか。

後半32分~全体を広く保ったままのポゼッションはきつかったのか、足が止まりだす。
攻撃時クロアチアはボールへのフォローが足りないため、数的に常に不利な状況へとなる。
そのため、攻撃への決め手が足りない。

改良型カテナチオにより単調になる攻撃

 オフサイドのルールが変わる度に進化する戦術だが、現在ではディフェンス時に二列になってラインコントロールとゾーンプレスを組み合わせた改良型カテナチオが標準化した。
そのせいで攻撃することが難しく、各国カウンター以外で違いを見せることが難しい状態である。

攻撃的なブラジルも類にもれず、ネイマールがいても単調な攻撃になる。
今回は相手が守備的なクロアチアであることも理由にはなると思うが、全体での連携や組織だった攻撃をすることが出来ないのだ。

延長戦へ

 選手を交代し、ネイマールが中央に入ることで試合が動き出す。
ネイマールの得点能力を期待して左サイドに配置しているのだろうが、見ている人はメッシのようなネイマールのパスにも期待しているのではなかろうか。

どこかの解説では「パサーとしてよりもフィニッシャー(シュートを打つ人)として本人が希望している」と言っていたので、本人希望なのだろうか。

技術や戦術よりも目立つ疲労

 ワールドカップと言えば、大会が始まってから各国がチームとして熟成していく過程や、体力や怪我の管理を見ることが楽しい。
しかし今回中三日というかつて無い地獄の過密日程が影響し、各国が前半を相手の様子見と体力管理に当てていることが見て取れる。
大会規模が大きくなり難しくなることは分かるが、やはりもう少し休みは必要となるのではなかろうか。

クロアチアは特徴がない?それとも…

 ここまでクロアチアの戦術を分析してきたつもりだったのだが、どうやら見誤っていたようだ。
クロアチアのディフェンスは基本的に改良型カテナチオであり、オフェンスはモドリッチを中心とした穴を見つけるためのポゼッションサッカーであることは話してきた。
ビリーはブラジル戦で大差がつく予想をしていたが、延長線まで長引く引き分けの末PKでブラジルを撃破した。

良いサッカーとは「相手の良さを消し、自分たちのサッカーをすることが」と言われるが、この試合を何度か見直す中で気づいたのは、クロアチアは相手の良さを潰すことに徹し、変幻自在なディフェンスをしていた。

サイド攻撃が得意なチームであればサイドへゾーンプレスを行い、ポゼッションが得意なチームであればゾーンプレスを行う。
逆にゾーンプレスが得意なチームに対しては選手間の距離を広くすることでゾーンプレスをさせない。
クロアチアは確かに攻撃力が足りないかもしれないが、この『良いサッカー』を体現しているのかもしれない。

攻撃に関しては、モドリッチがディフェンスラインの組み立て始め(ビルドアップ、ゲームメイク)のボール回しから参加するため二手三手遅れを取ることが多く、カウンターが成立しない。

クロアチアがどこまで勝ち残れるだろうか。